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岡山地方裁判所 平成6年(ワ)1212号 判決

原告 津下章

被告 国ほか一名

代理人 赤枝京二 永井行雄 ほか六名

主文

一  別紙物件目録一記載の土地と、同目録三記載の土地との境界を、別紙境界図の〈イ〉〈ロ〉〈ハ〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定する。

二  別紙物件目録二記載の土地と同目録三記載の土地との境界を、別紙境界図の〈ハ〉〈ニ〉〈D〉〈A〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定する。

三  別紙物件目録二記載の土地と同目録四記載の土地との境界を、別紙測量図の〈A〉〈ホ〉〈B〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定する。

四  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文第一ないし第三項と同旨。

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告国)

1 別紙物件目録二記載の土地と同目録四記載の土地との境界の確定を求める。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は別紙物件目録一、二の土地(以下、順に「一土地」「二土地」という。)を、被告國安史郎(以下、「被告國安」という。)は同目録三の土地(以下、「三土地」という。)を、被告国は同目録四の土地(以下、「四土地」という。)をそれぞれ所有している。

2  原告及び被告らの各土地の位置関係は、別紙境界図のとおりであり、一土地と三土地は隣接し、二土地と三土地及び四土地は隣接している。

3  (被告國安所有地との境界)

一土地と、三土地との境界は、別紙境界図の〈イ〉〈ロ〉〈ハ〉の各点を順次直線で結ぶ線であり、二土地と三土地との境界は、別紙境界図の〈ハ〉〈ニ〉〈D〉〈A〉の各点を順次直線で結ぶ線であるが、被告國安は、境界線がいずれも原告主張の線より一土地及び二土地に侵入した点であると主張して、争う。

4  (被告国所有地との境界)

二土地と四土地との境界は、別紙測量図の〈A〉〈ホ〉〈B〉の各点を順次直線で結ぶ線であるが、被告國安が立ち会わないため〈A〉点の確定ができず、そのために被告国との境界協議が整わない。

5  よって、原告は、被告らに対し、請求の趣旨記載の判決を求める。

二  請求原因に対する認否

(被告國安)

被告國安は、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面も提出しない。

(被告国)

1 請求原因1の事実のうち、被告国が四土地を所有していることは認めるが、その余は知らない。

2 請求原因2の事実は認める。

3 請求原因4は争う。

本件では、原告、被告国及び被告國安のそれぞれの土地が接する点について争いがあり、関係人である被告國安が立会いを拒んだ結果、被告国としては原告との間の境界確定協議に応じることができなかったものであり、被告国としては、本件訴訟においても、被告國安との間の境界についての争いがある以上、原告との境界線について明確な主張をすることができない。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1について

請求原因1の事実のうち、被告国が四土地を所有していることは原告と被告国との間では争いがない。

〈証拠略〉によると、請求原因1の事実が認められる。

二  請求原因2について

請求原因2の事実は、原告と被告国との間では争いがない。

〈証拠略〉によると、請求原因2の事実が認められる。

三  請求原因3(被告國安所有地との境界)について

1  前記一、二で認定した事実、〈証拠略〉によると、次の事実が認められる。

(一)  原告所有の一土地、二土地及び被告國安所有の三土地との位置関係は、別紙境界図のとおりである。

かつて、原告の両親は、一土地を畑として、二土地を田として使用していたものであり、従前、二土地の方が一土地よりも約六〇センチメートル低かった。また、被告國安所有の三土地と原告方の二土地との間にも、同程度の高低差があり、二土地の方が低かったが、一土地と三土地は、同じくらいの高さであった。ところが、原告は、二土地に倉庫兼事務所を建てようと計画し、昭和五八年頃、二土地を埋め立てた結果、一土地、三土地と二土地との間の高低差はなくなった。そのため、被告國安は、二土地と三土地との境界の目印として、溝を掘った。なお、一土地と三土地との間には、従前から溝があり、それが、一土地と三土地との境界と認識されていた。

その後、被告國安は、二土地と三土地の境界の溝及び一土地と三土地の境界の溝を、次第に原告所有地を侵食する形で移動してきているが、原告が主張する、原告と被告國安各所有地の境界線(別紙境界図の〈イ〉〈ロ〉〈ハ〉〈ニ〉〈D〉〈A〉を順次直線で結んだ線)は、被告國安が移動した後の各溝の現在の位置(当初の溝の位置よりも、一〇センチメートル以上原告所有地側に入りこんでいる。)の中央線である。

(二)  原告は、昭和六一、二年頃、被告國安所有の三土地との境界を決めようとして、町内会長の立会いのもと、〈イ〉点及び〈イ〉〈ロ〉線の中央付近の点に被告國安の主張どおりに杭を打ったが、その時、東西の境界線を決めることについて被告國安が抵抗したので、境界を決めないままになった。

(三)  なお、二土地、三土地と四土地との境界交差点であるA点は、平成六年九月一二日原告と被告国が二土地と四土地との境界確定協議を行おうとした際、関係者である被告國安が立会いを拒否したために、その位置を確定できなかった。

(四)  被告國安は、原告が申し立てた境界確定のための調停にも出席をせず、境界の確認に応じないものの、本訴提起後、原告に対し、原告主張の境界線について、何ら異議を述べたことがない。

2  右の認定事実その他本件に表れた諸事情を総合考慮すると、一土地と三土地との境界を、別紙境界図の〈イ〉〈ロ〉〈ハ〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定し、二土地と三土地との境界を、別紙境界図の〈ハ〉〈ニ〉〈D〉〈A〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定するのが相当である。

四  請求原因4(被告国所有地との境界)について

〈証拠略〉によると、従前、田である二土地と道路である四土地とは、土地の高低差(四土地の方が約六〇センチメートル高かった。)及びコンクリート舗装の有無等で、はっきりと境界が区別できていたこと、しかし、被告國安が昭和六〇年頃から、次第に二土地を侵食して道路部分を拡幅してきたこと、原告及び被告国は、平成六年九月一二日、当事者双方及び関係人立会いの上で二土地と四土地との境界確定協議を行おうとし、境界は、当事者間で、別紙測量図のとおりK1(〈B〉点と同一)K2(〈ホ〉点と同一)K3K4(〈A〉点と同一。なお、別紙境界図の〈A〉点に対応する。)の各点を順次直線で結ぶ線と認識されたが、関係人である被告國安が立ち会わなかったため〈A〉点の位置が確定できず、原告と被告国との境界確定協議が整わなかったことが認められる。

このように、関係人が立ち会わないために、原告所有地と被告国所有地との境界確定協議が整わず、被告国が原告との境界線について明確な主張をすることができない場合、原告には、境界確定の訴えによって被告国所有地との境界線の確定を求める利益があるというべきである。

そして、右の認定事実その他本件に表れた諸事情を総合考慮すると、二土地と四土地との境界は、別紙測量図の〈A〉(別紙境界図の〈A〉点に対応する。)〈ホ〉〈B〉の各点を順次直線で結ぶ線であると確定するのが相当である。

五  結論

以上によると、原告の被告らに対する訴えはいずれも理由があるから、一土地と三土地との境界を、別紙境界図の〈イ〉〈ロ〉〈ハ〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定し、二土地と三土地との境界を、別紙境界図の〈ハ〉〈ニ〉〈D〉〈A〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定し、二土地と四土地との境界を、別紙測量図の〈A〉(別紙境界図の〈A〉点に対応する。)〈ホ〉〈B〉の各点を順次直線で結ぶ線と確定し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 白井俊美)

物件目録

一 岡山市沼字鼡窪一五九一番

畑             八二平方メートル

二 岡山市沼字鼡窪一五九二番一

田            一九五平方メートル

三 岡山市沼字鼡窪一五九〇番

畑             六二平方メートル

四 右二、三の土地に隣接する市道敷地

現状は、幅員約一・五三平方メートルのアスファルト舗装道

本土地は、いわゆる赤線道と呼ばれるもので、無番地で登記はなく、被告国の所有であるが、岡山市が市道として管理しているもの。

境界図〈省略〉

測量図〈省略〉

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